メルセデス・ベンツ190E(W201)に32年間乗り続けたご夫妻
32年間で33万キロ走り乗り続けた190Eを、マツシマクラシックカーが2年の期間と、およそ200万円のパーツ代をかけてリフレッシュした。エンジンルームや足回りをはじめ、シートやウッドパネルまで、塗装以外は多岐にわたって手が入れられている。
夫婦で走った33万キロ
1989年式メルセデス・ベンツ190Eコンプレットを、32年間乗り続けて、33万キロ走ったご夫妻。テレビの報道番組などで、日本の車よりもドイツ車の方が安全性が高いという特集を観て「がっちりした安全性を考えた車に乗りたいと」と思ったのが購入のきっかけだった。
「車にとってはいい運転の仕方をしていたかもしれません。月曜日から金曜日までは家内が市内の短距離の移動をして、私が月に3回ぐらい京都から福知山まで高速道路を1時間半ぐらい走っていました。低速度ばかりで動いているよりは、週に1回ぐらいは高速道路を、しかも長距離を走ったことが車にはよかったと思います」
190Eにはクルマとしての楽しさががある
190Eは、数多くのベンツ車を手掛けたチーフデザイナー「ブルーノ・サッコ」による、1980年代から1990年代のベンツ車を象徴するようなデザイン。本格的な風洞実験、新開発のサスペンションの実走行テスト、前後衝撃吸収衝突テストなど、メルセデス・ベンツの哲学を凝縮した偉大なコンパクトクラスと言える。
「途中もう一台メルセデス・ベンツS124型のEクラスのステーションワゴンを購入しました。田舎に行くのに草刈り機を載せたりして、荷物がたくさん載せられるのでワゴンの方が良かったのですけど、2台を比べて、結局ワゴンの方を売却して190Eを残したんです。愛着もありましたし、車自体の面白さというのは190Eの方がよかったと思います。例えば、付いているホイールが、190Eは鍛造ですが、ワゴンは鋳造になっていました。ちょっとコストダウンしてきたかなと思いました」
190Eは、ダイムラー・ベンツが開発したマルチリンク式リアサスペンションを世界で初めて採用した。ボディ剛性においては190Eの後に登場するW124を凌ぐほど。タイヤの路面追従性に優れ、常に安定した接地性を確保することが可能としている。
「高速道路を走って福知山まで行っていましたから、落下物を見つけて避ける時に挙動がふわっとならない、あおられないですよね。しっかりと避けられる。安心感が全然違うんです。やはり、乗っていて楽しく、安心感がある車。それが一番ですね」
S124の方が大きいということもあったが、奥様も190Eの卓越した操縦安定性に運転しやすさを感じていた。
「190Eは、カーブを曲がっているときも大回りしないで、自分の思ったところにちゃんと曲がっていてくれる、レールの上を走っているような安心感がありましたね」
長く乗っていると新しい発見がある
32年間乗り続けられたのには、当時お世話になっていたディーラーでの親切なサービスフロントとの出会いも大きかった。。
「低速時にスピードメーターの針が揺れて、スピードを上げれば安定してきます。揺れがあまりにひどくなると車検に通らなくなると言われました。15年ぐらいからサイドブレーキが甘くなって。力いっぱいひかないとだめで、そうすると家内が降ろせなくなって。オートマチックトランスミッションは一度交換しています。調子が悪くなって、オートマのオイルに金属片が細いのが出てきて交換しました。交換した時に、オートマを替えてもまだ乗るのかといわれましたね。買う時にはマニュアルミッションがあればそちらの方にしたかったのですが、このモデルには無かったのですね。15年ほど乗った時に、塗装を全部やり替えています。全塗装するとものすごい費用になるので、サッコ・プレート(車体側面の下半分に付いている樹脂のプロテクター)の下は塗らずに、費用を節約しました」
メルセデス・ベンツから長距離走行と長期間保の有表彰も受けて、感謝状と記念品を190Eの思い出とともに大切に残している。
「30数年間乗っていると家族みたいな息子みたいで、別れるときは悲しかったです。レッカーで持っていかれる前に、いっぱい写真を撮って残しています。最後引き渡す直前は水漏れして室内が濡れていました。ダッシュボードやフロアカーペットまですべて取り外して整備した190Eは、見違えるようにきれいになりました。この車をマツシマのクラシックカー部門で社用車として使われると聞いて、とても嬉しいです。」
メルセデス・ベンツ190Eのレストア記録
1990年から2022年6月まで32年6か月、走行距離335,000㎞余り走行しているため、経年劣化や傷、凹みはあるが大きな錆の発生がない。当時の塗装をできる限り残すため板金修理は実施していません。超硬質金属のルーフモール、ウィンドウフレームの研磨。ヘッドライト、テールライト灯火類はレンズとリフレクターが分解できる構造のため分解清掃と研磨。エンジンルームやボンネット裏の状態チェックし洗浄、清掃、磨き。アルミホイールはブレーキダストの固着を除去するためにアルミホイール洗浄機による清掃。フロントグリルの研磨、ドアハンドル4つの分解清掃、サンルーフ機構のゆがみを調整……などを実施しています。